釧路湿原とつきあう

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海岸に近い釧路湿原を含むここ道東の湿原は、臨海湿原地帯とも言われる。
そして沖合を黒潮が流れ沿岸部は冷たい親潮が入ってきているため海霧が発生しやすく夏でも冷涼となり「暖かさ指数」から見ると冷温帯と言うより亜寒帯に属する気候である。
その事例として植物の不連続分布がある。本来は、サハリンや千島以北に分布する植物の一部がこの東部の湿原に生育地が隔離されて飛び石のように分布している。
落石湿原のサカイツツジ、ヒメイソツツジ、霧多布湿原のカラクサキンポウゲ、霧多布湿原、別寒辺牛湿原、釧路湿原に分布するクシロハナシノブやハナタネツケバナなどである。
また釧路湿原は臨海低湿地地帯に形成された特徴がよく表されている。
かつての内湾を推察させる海跡湖沼、湖沼が植物で埋められていく初期の湿原、幾本もの河川にうるおされるヨシ・スゲ湿原、雨水や海霧のみにうるおされるミズゴケ湿原、そして低湿地で唯一の樹林を形成するハンノキ林、長い年月の内に移り変わってゆくそれぞれの湿原の顔をみせてくれる。
湿原はもっとも壊れやすい自然と言われている。
河川改修は下流の湿原域を変化させるし、ミズゴケ類も一度踏みつけると黒く枯死して容易に回復しない。また湿原を取り囲む山や上流域の開発は底となる湿原に過大な影響を与える。
湿原というかよわい自然をいためないようにつきあってゆく。
ミズゴケ湿原の木道、河川や湖沼をゆっくりと静かに進むカヌー、冬の凍結した河川や湖沼を散策するクロスカントリースキー、いずれにしても湿原にとけ込んで生活している生き物たちの存在に近づいたスタイルでのつきあいが不可欠であろう。
大勢で大挙して乗り込んだりしない配慮が必要なのであろう。
湿原の周りでは開発が行われ、以前と比べ湿原は小さくなってきている。
とはいえ、釧路湿原は数千年の時を経ても今なお、ほぼ自然の生態系を維持しているが、
今日の湿原の周りで起きていることは少しずつ変化をもたらしている。
このままでは遠くない将来、水の草原である湿原が無くなるかもしれない。
我々は自然との湿原とのつきあいを見直す時期にきているのではないか。
今一度、数千年の時をつないできた湿原を見つめたいと思う。
また、当たり前にあった湿原を確かな目で見、それを伝えてゆきたいと思う。
 
 



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